プロセシング

  • 医療デバイスへのMPCポリマーのコーティング

背景と目的

MPCポリマーは優れた抗血栓性を有することから,インプラントや人工臓器,ステントなどの医療デバイス表面にコーティングする技術が望まれている.しかし,医療デバイスによく用いられるシリコン表面は疎水性であるため,親水性のMPCポリマーをコーティングすることは容易ではない.

MPCポリマーをシリコンに強固にコーティングするためには,シリコン表面とMPCポリマーを化学的に共有結合させることが必要である.シリコンは,シロキサン結合(Si-O-Si)を主骨格として,メチル基が取り巻く螺旋状の分子構造となっている.このメチル基を様々な官能基に置換することにより,シリコンに新たな機能を付与できる.例えば,シリコン表面のメチル基をカルボキシル基(-COOH)または水酸基(-OH)に置換すれば,MPCポリマーの側鎖をシリコン表面に強固に結合できると考えられる.

メチル基をカルボキシル基に置換する方法は,酸化雰囲気でプラズマを照射する方法や波長254 nmの紫外線を照射する方法,あるいは化学的な処理法が文献で示されている.本研究では,生産性を考慮して表面改質に要する処理時間を短くすること,またドライプロセスとしたいことから,フォトンエネルギーが高い波長172 nmの真空紫外線を用いて表面処理を行なうことを試みた.また,改質後のシリコン表面にMPCポリマーをコーティングし,表面状態を観察・分析するとともに生体内でのコーティング耐性を調べるために溶出試験を行っている.

シリコン表面改質ドライプロセス実験装置

真空紫外線発生装置(エキシマランプ)

真空紫外線照射後のシリコン表面の状態(XPS)

シリコン表面にコーティングしたMPCポリマー